Growth Mindset 学習を行う上で最も重要なことの一つ。

Growth Mindset 学習を行う上で最も重要なことの一つ。

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「あなたの脳はある一定年齢に達すると退化する一方である。それはどうしようもないことなのだ」
中学生の頃生物学の授業で先生が言った言葉です。教科書にもそれらしきことが書いてありました。
確か1990年代の前半と記憶しています。
ところがこの先生の言った言葉と、当時教科書で教えられていた脳についての常識が、実は誤りであったことが後に判明します。
これは脳科学の世界に衝撃を与えました。


脳はある一定年齢に達すると退化する一方?

“Your brain is left to deteriorate after you reach a certain age. There’s nothing you can do about it.”
「あなたの脳はある一定年齢に達すると退化する一方である。それはどうしようもないことなのだ」

中学生の頃生物学の授業で先生が言った言葉です。教科書にもそれらしきことが書いてありました。
確か1990年代の前半と記憶しています。

ところがこの先生の言った言葉と当時教科書で教えられていた脳についての常識が実は誤りであったことが後に判明します。
これは脳科学の世界に衝撃を与えました。

Mindset 学習メソッド以前の問題

かなり効果があるはずの学習メソッドを用いても成果の出ない人がいます。
例えば会話であれば王道は、リスニングをベースにしてフレーズ集を用いながら実際に英会話。なるだけ毎日。
これはかなり優れた方法です。しかし、それでも全然上達しない人がいます。

一方、そこそこの学習メソッドしか用いていないのに成果がガンガン出る人もいます。
これは一体なぜでしょう?

もちろん実際の原因は様々な要因が絡んでいるので、一概には言えません。しかし、往々にして考えられる原因の一つはMindsetです。
Mindset、つまり「ものの見方、考え方」がおかしいと、上達が遅くなるばかりか、最後は英語そのものも諦める結果にもつながります。

今回このMindsetについてStanford大学のCarol Dweck教授の研究の成果も踏まえて触れてみたいと思います。
この記事を読み終わる頃にはあなたのMindsetは変わっているでしょう。

二つのMindset。Growth MindsetとFixed Mindset

Stanford大学のCarol Dweck教授は、学習に関連して大きく二種類のMindsetがあると述べました。
それはGrowth MindsetとFixed Mindsetです。

Growth Mindsetとは「人は成長するものだ」というものの見方です。つまり何か新しいことにチャレンジする時、「最初は出来なくて当たり前。やるからできるようになる」と思える人はGrowth Mindsetの持ち主であると言えます。

一方、Fixed Mindsetとは「人ができる事・できない事は生まれ持った才能や能力によって限界がはじめから決まっている」というものの見方です。つまり困難や壁にぶつかった時、すぐに投げ出す人はFixed Mindsetの傾向が強いと言えます。新しいことをやり始めてちょっと壁にぶつかったくらいですぐに「私には向いていない」、と。

言語学習に限った話ではありませんが、大きな成果につながる可能性をより多く秘めているのはGrowth Mindsetの人であることは説明の必要すらないと思います。

実は思ったよりも根深いFixed Mindsetの罠

世の中の多くの人は残念ながらFixed Mindsetの持ち主です。
もちろんこのMindsetは「どっちか一つ」という極端なものではなく、傾向としてどちらが強いか、あるいはある側面においてはどちらかが優勢で別の側面においては違うかもしれない、というものです。また、いくらでもこのMindsetは変わります。一生今のままというわけではありません。
Fixed MindsetかGrowth Mindsetの持ち主であるかどうかの判断をする一つの尺度あります。

世の中にいわゆる成功者という人がいます。例えばスポーツの世界ではイチロー選手。ちょっと古くなってしまいますが、バスケットボールのマイケル・ジョーダンやサッカーのディエゴ・マラドーナ。マイクロソフトのビル・ゲイツ。アップルのスティーブ・ジョブズ。
これらの人たちが成功したのはなぜですか?
もしあなたの頭の中に「才能があったから」とか、「彼らは天才だった」等の考えが浮かぶのであれば、あなたはFixed Mindsetの傾向が強い可能性があります。

「えっ!?」
という声が聞こえてきそうです。

今までいろいろな人に上記と同等の質問をしてきました。
9割がたの人が彼らのような成功者は「才能があったから」とか「天才だったから」等と答えます。
あるいはPolyglotと呼ばれる何カ国語もの言語をペラペラ使いこなす人たちが世の中にはいます。中には10カ国語以上喋れる人もざらではありません。
彼らの事も「天才」としか見れない人の何と多い事か。
しかしその発想が実は自らの可能性を狭めている事に気づいていません。特に言語学習に関しては才能や年齢などは全く関係ないし、ただ単に自らの可能性を信じてやるかやらないかの世界だというのに。

あるいは普段できることばかりやって、できない事にチャレンジするのが億劫だとあなたがもし感じていれば、あなたはFixed Mindsetの傾向が強い可能性があります。

こういう考え方を持つに至る原因の一つはマスコミ等にもあると言えます。テレビを付ければ「天才少年」とか「天才〇〇」みたいに発表していますね。何かすごい人がいれば。
それ自体は別にどうということはないように思えるかもしれませんが、実は深いところで私たちの物の考え方に影響を与えているのです。
成功の原因を「天才だから」と言ってしまうと、その裏でその天才と呼ばれる人たちがやってきた努力に焦点が合わなくなってしまいます。
そういった考え方を受け入れてしまうと、Fixed Mindsetが自らの中で育ち、難しいことを避けるような生き方をするようになる可能性が高まります。

逆に、基本的に多くの成功者は成功者と呼ばれるようになるまで半端じゃない努力をしていますよね。何もしないで天才と呼ばれるようになる人は稀です。基本的には弛まぬ努力が背景にあります。そこをきちんと見れればGrowth Mindsetが自らの中に育ち、難しいこともチャレンジするような生き方ができます。

Growth Mindsetの人は努力を惜しまない。だから成果が出る

Growth Mindsetの人は努力を惜しみません。なぜなら物事はやるから結果が出ると分かっているからです。
今、出来ないことを出来るようになってからやろうとすると一生できない。やるからできるようになると理解しています。

初めは上手く行かなかったり、苦労したりするのは当たり前である、と理解しています。

昔ある人がこう言いました。「努力という言葉は嫌い」だと。
「好きなことだけをしていれば努力しているという感覚はない」、「努力も習慣化すれば当たり前になり、努力と感じなくなる」、「努力という言葉を使っているうちはまだ分かっていない」と。
私はこう言いました。「それは単なる言葉遊びじゃない?」と。要するに自らの成長を信じてやればどういう言葉を使ってもいいと思います。やれば良いんです。Growth Mindsetの人は努力を最高の楽しみの一つだと思っています。出来ないことが出来るようになること自体が楽しいのです。

科学的にはGrowth Mindsetが正しい

ここまで読んで、「なんだか精神論とか自己啓発みたいだな」と感じ方もいるのではないでしょうか。
まあ、私的には呼び方はどうでもいいのですが、一応ここに述べているGrowth Mindsetの考え方は実際の脳の仕組みから言っても正しいということが分かっています。
脳は何歳になっても幼少期のように変わる性質があるということが1990年代の後半分かりました。
これは専門的には英語で nueroplasticity 、日本語では「脳の可塑性」と言われているものです。
脳は何歳でも変わるのです。良くも悪くも。
これがこの記事の冒頭で触れた、脳はある一定年齢に達すると退化する一方である、という見方がどう誤っていたか、という問いの答えです。

別の言い方をすれば、脳は筋肉のように鍛えれば成長するものである事が明らかになっている、ということです。
だから使えば使った分だけ強くなるし、使わなければその分退化します。

多くの人は年を取ると記憶力が悪くなると思っているようです。しかしそれは「そう思っているからそうなっているのかもしれない」という可能性についてあなたは考えたことがありますか?
これを心理学では英語で self fulfilling prophesy 、日本語で「自己充足的予言」と呼んでいます。つまり思った通りに物事はなりがちという事です。

脳について、人間について、まだまだ分からないことだらけです。物事の結論を出すのはあまりに早すぎると思います。

昔ヘンリーフォードはこう言ったそうです。「あなたができると信じても、できないと信じても、結果は常にその通りになる」

peace
Shannon

Mindsetの参考文献:
英語版

日本語翻訳版